その男の子の名前は、大地くん。名前の通り元気いっぱいで、足も速い子でした。かけっこでは、よく一等賞を取っていたのを覚えています。いつも太陽の下で転げまわっているせいか、日焼けした肌は黒く健康的な色をしていました。

冬の寒さも何のその。みんなが長そでを着始めても、まだ大地くんは半そででした。みんながしっかり厚着をしていても、大地くんは軽装をしていました。「寒くないの?」と聞いて「寒いよ」という答えを聞いたことはありません。「風邪ひいちゃうよ?」と心配して「そうかもね」と答えられたことはありません。

いつも元気いっぱいの大地くんは冷たい風が吹いていても「寒くない」と言い、学校で風邪が流行っていても「ボクは大丈夫だ」と自信満々でした。それもただのやせ我慢ではなかったようで、本当に寒そうにしていたことはなかったし、大地くんが風邪をひいて学校を休んだ記憶もありません。

大地くんとは、私もよく一緒に遊んでいました。学校の休み時間、向かう場所は体育館かグラウンド。みんなで鬼ごっこをして大地くんが鬼になれば、すぐにつかまってしまいます。足の速さを競ってみれば、大地くんの右に出るものはいませんでした。

大地くんは名前の通り、地面が大好きな子でした。服が汚れるのも気にせずどこにでも座っていたし、そればかりじゃなく寝たり転がったりしていました。他の男の子も同じようにしていたはずだけど、なぜか地面に直接座ったり寝たりしている大地くんの姿だけが記憶に残っています。

そんな大地くんが、何とも気恥ずかしそうにする場面がありました。「そんなに褒めるなよ」「そんなに感謝される覚えはないよ」しまいには「そんなに愛されても困る…」とまで、思っていたかどうかは定かじゃありませんが。

いつもはこんがり焼けた大地くんの頬が、赤く染まるとき。それは、クラス全員で『大地讃頌』を合唱するときです。

「大地を愛せよ」「大地をほめよ」「感謝せよ」クラスのみんなが大きな声で口々にそう歌うと、大地くんはまるで自分に言われているかのように、照れくさそうにしていました。何より、自分で「愛せよ・ほめよ・感謝せよ」と歌わなければいけないことが恥ずかしかったようです。

大地くん。今でも風邪知らずで、地面に寝転んだり走り回ったりしているのかなぁ…。